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フィレンツェ郊外、キャンティワインのメッカで生ハムののったチーズなジェラートを食す!アンティーカ マチェレリア ファロルニ Antica Macelleria Falorni



山紫水明。
日に映えて山が紫に、
清らかな川の水が澄んではっきりと見えること。

儒学者の頼山陽(らいさんよう、1780-1832)によって

京都の麗しい景色を描写するために初めて使われたこの四字熟語は
実はフィレンツェの南に位置する地方にもぴったりだと、
みなさんのドクターエドが勝手に判断した。

山の紫というのは、日差しを浴びる赤ワイン用の葡萄の実。

澄んでキラキラする水というのは、
その地域を南北に分けて流れるグレーヴェ川。
その地方の名は、ワインバーに入ったことがある人なら
聞いたことあるでしょう。そう、キャンティ地方でござる。


キャンティワインの地、グレーヴェインキャンティ
大昔、宿敵であったフィレンツェとシエナの間に位置するこの地域は、
現在はほかに類を見ない、極上のコクのある
赤ワインの産地として世界中で名高い。
そんなのどかな景色のど真ん中にある小さな村、
グレーヴェ・イン・キャンティ(略してグレーヴェと言う)は、
ワインの市場としても知られているが、
実は別の名物でも有名なのである。


トスカーナ フィレンツェ郊外 グレーヴェインキャンティ キャンティワイン アンティーカマチェレリアファロルニ antica macelleria falorni ジェラートハンター フィレンツェジェラートレビュー


それは、赤ワインに完璧にマッチする、お肉類だ。

グレーヴェのメイン広場に1806年から営業しつづける肉屋さんがある。
牛豚両肉(これはドクターエドの独自に作り上げた四字熟語だ)堪能で、
昔ながらの伝統を,今風のおしゃれなビストロにアレンジしたこの店の名前は、
アンティーカ・マチェレリア・ファロルニ(古き肉屋ファロールニ)である。


イノシシのゆるキャラ(嘘)がお出迎え


ズラリと並ぶ生ハム





おいおい、ちょっと待って。
これはジェラートレビューじゃなかったっけ?  
とお気になられる読者様の方々よ、まぁまぁ、少々お待ちください。
確かにこの店に入った時は、牛肉のタルタルやサラミ、
生ハムとチーズのタリエーレ(盛り合わせ)などの
ミートオンリーメニューを食べ、
キャンティワインのテイスティングでもしようかな、と思っていたのだが、
なんとびっくり、そこは運命の出来事の舞台であった。


生ハムやサラミの他、勿論新鮮なお肉も販売している




肉屋ビストロのカウンターに近づくと、なんと、

モッツァレラ味ジェラートの生ハムトッピング
というものがある。


変り種ジェラートメニュー発見!
前回のジェラートレビューでも、オリーブオイルをかけた
ヨーグルトジェラートという斬新な出会いがあったが、
まさかこれは斬新というより画期的だろう。
さっそく、肉屋さんとジェラート屋さんを融合したような
オシャレなカウンターの向こうにいる女性に向かって注文してみた。
テーブルに座ってしばらく待つと、お店の人がそれを運んできてくれた。


モッツアレラと生ハムのジェラート

何度見返しても生ハムののったジェラートである。

恐る恐るスプーンにジェラートをすくうと,
トッピングのジ生ハムがうまいこと乗ってくる。
すばらしいコンビネーション。
そしてそれを口にすると、まず「塩!」と「砂糖!」といった味が、
それぞれはっきり感じられる。
ちょっと合わないかな、と思った瞬間に、
ジェラートが口の中で溶けてくる。チーズなのだろうか、
乳脂肪分的な粒つぶした何感じられる。ちょっともちっとした食感 

そう、それはモッツァレラだった。



ジェラートではなくても美味しい生ハムとモッツアレラ
ちょっと待て。これはウマい!
あまりにも新しい味の組合わせで口がやはり最初は迷ってしまうけど、
一口、また一口と食べているうちに間違いなくはまってしまう。

「これは、合いますね!」と、カウンターの向こうで

ニコニコしている女性店員、フランチェスカさんに言う。
「そうですね。だれも想像できない組合わせでしょう。
うちのシェフとオーナーさんが考えだしたんです。
他の味もいかがですか?」。


いろいろ説明をしてくれた店員のフランチェスカさん

お値段はイタリアのジェラートにしてはちょっと高めの3,50ユーロで、

一つのサイズしかない。メニューにはあと二つの味のジェラートがある。
これらもまた今まで聞いたことのないものだった。
ペコリーノチーズ(羊のチーズ)をかけた洋梨のジェラートと、
砕いたビスコッティ(固いビスケット)をふりかけた
ヴィンサント(デザートワイン)のジェラート。
よし、これはジェラートレビューにぴったりだ!と思い、しっかり全て注文する。 


3種類とも全てオーダー!
洋梨のジェラートには、細かく切った洋梨の果実が入っていて、
フルーティーな甘み。そしてペコリーノチーズのしょっぱさは
その甘みとパーフェクトマッチする。
この洋梨とペコリーノという組み合わせは、
実は昔からイタリア農家の裏メニューとして知られており、
ドクターエドの好きなデザートの一つである。
ただ、これをアイスにするとは!満点合格。 


ペコリーノチーズがしっかり乗っている洋梨のジェラート
同じく、ビスコッティとヴィンサントも、
そもそもフィレンツェ周辺の伝統的なデザートであり、
固いビスケットをヴィンサントに浸して食べる、というもの。


ヴィンサントワインとビスコッティのジェラート

これらのデザートをジェラートにするとは。
調子にのったドクターエドは、
別でビスコッティを追加注文してアイスに付けて食べてみた。

「先週までは栗味のジェラートにローズマリー風味のキャラメルと

イノシシのサラミを乗せたフレーバーもありましたが、
残念ながらもう春になり、栗のシーズンが終わってしまったので、
これから旬となる洋梨に変えたんです。 
また夏になると違うメニューになると思います」。

ファロルニがジェラートを売り出したのは去年の夏らしく
最初はメロン味のジェラートに生ハムをトッピングした
フレーバーしかなかったと教えてくれえた。

うんうん、と頷きながらも、少し疑問が浮かんだ。

ちょっと待てよ、こんな急に今までずーっと肉屋さんだった人たちが、
こんなに美味しく珍しいジェラートを作り出せるものだろうか?
これは怪しいぞ。そんな時、ふと、食べ終わったジェラートの
コップに目が止まった。謎の糸口を発見!
Vivoli(ヴィヴォリ)という文字だ。
そう、フィレンツェのガイドブックならどこにでも必ず載っている、
最古のジェラテリア「ヴィヴォリ」のジェラートだったんだ!




さっそく、ファロールニ家のお嬢さん且つ会社のマネージャーである

カテリーナさんCaterina Bencistà Falorniに電話をかけてもらい、
この夢のコラボを詳しく聞くことに。

「ファロルニもヴィヴォリも家族で営業してきた老舗で、

昔からそれぞれの製品を紹介するために
いろんなフードフェアを回っていました。
それをきっかけにうちの父と、今は亡きヴィヴォリのお父さんは友達になり、
メロン味のジェラートと生ハムの商品が生まれました。
そして二年前ぐらい、ファロルニがフィレンツェに新しい
店舗をオープンした際、ヴィヴォリの本店から近かったので、
両家の次世代の私たちも親しくなり、またそのコラボを深めようと、
一緒にジェラートメニューを考えはじめたんです。
もちろん、ヴィヴォリのジェラートも
最高のジェラート職人の技だけあって、最高品質なのですが、
それゆえシーズンの果物しか使いません。
だから季節によってこちらのメニューも毎回変えなければなりませんが、
それはまた面白いところでもあります」。 
 


モッツァレラと生ハムのジェラートは想像を超える相性のよさだった
たった二年目だけれど、もうファロルニのジェラートは
地元の人と観光客に大人気。

皆さん、キャンティを訪ねる理由がまた増えましたね。

1葡萄畑とオリーブの木々が立ち並ぶプライスレスな眺め。
1、世界中で愛される赤ワイン。
1、トスカーナの伝統に満ちた肉やサラミ。
そしてその味や歴史をさらにアンジしたジェラート。
これでグレーヴェは一生に一度は訪ねなければならない街になりましたね。 

ところで、そういえば今日は景色を十分に楽しみ、

ジェラートをたっぷり味わったけど、
そもそもここまで来る理由はやっぱり肉とワインだったのを忘れていた。
そろそろお昼ご飯の時間なので、さっそく肉を注文することにした。

まず、ファロルニの高級な牛肉でできたタルタル。



マグロの中トロのような高級牛肉のタルタル

さまざまな種類の中から、生ハムとペコリーノチーズのトッピングを選ぶ。

タルタルというのは、生肉のことだが、これは全く生臭さがなく、
生ハムとチーズがその味を深め、サイドのマスタードが
ちょうどいいパンチを加える。何かに似ている。
日本人カメラマンのhiralingさんと意見の交換をした結果、 
どちらかというとマグロの中トロみたいだねと、言うところに落ち着いた

その後、イタリア以外ではあまり使われていない

イノシシの肉をトマトソースで煮込んだものをオーダーした。


イノシシ肉のトマトソース煮込み、トスカーナ伝統の料理の一つ

これはトスカーナの正統なレシピに従って作られている、旨い。

せっかくだからキャンティも一杯飲んでしまいますか!
とフランチェスカさんに言ったら、ファロルニがプロデュースする
キャンティ・クラッシコをおすすめされた。


クラッシコというのは、さまざまなキャンティ・ワインの中で
上級なものを示す名称である。
キャンティをクラッシコにするにはいろいろな条件があるが、
一番大事なのはサンジョヴェーゼという種類の葡萄を80%以上を使うこと。
アヤメとスミレの香りで知られているサンジョヴェーゼ葡萄は
キャンティ原種の植物らしく、おそらく古代ローマかもっと前に
この地方に住んでいたエトルリア民族の時代から栽培されてきた。
フランスのワインと比べると、キャンティはやはり癖がある。
それほど呑みやすくはないけれど、その長い歴史の中で磨かれてきた
繊細な作り方とサンジョヴェーゼの素直な味は、ワイン通に愛されている。

市役所の垂れ幕に書いてあるように、グレーヴェは
città slow」(スローな街)であり、急いで食べるよりも
ゆっくりおいしいものを味わうという哲学に従っているようだ。
広場の近くにはワインミュージアムもあるようだが、
このフィロソフィーをワインを通じて学べるかもしれません。 


でもやっぱり一杯だけでは物足りないなぁ、と思い、
同じファロルニが経営しているエノテカ・ファロルニまで足を伸ばすことにした


ワインの販売、試飲やお食事も楽しめる
これは何百年前の建物の地下を使用した本物のワインセラー。
この広い部屋の真ん中にあるカウンターでグラスと
チップカードをもらい、部屋中に設置されている
オートディスペンサーに向かって、好きなワインを選び、
ボタンを押すと自分で好きな量だけテイスティングできる。



もちろん、ワインの質によって、値段が変わるが、

チップカードを東京メトロのPASMOみたいにチャージして、
好きなだけ何十種類のワインやグラッパを呑みながら
現代的なスタイルで伝統的なワインの試飲を楽しめる。





ここも今風のビストロができており、ワインにあった食事も楽しめる。

もちろん肉やサラミはファロルニの肉屋から提供されている。 

地上では葡萄の木々が五月の強い日差しで優しくきらめき、
地下のワイナリーではカウンターに向かって
ティスティングをエンジョイしているドクターエドが、
新宿のゴールデン街のきらめきを思い出しながら、
今回のジェラートレビューに幕を閉めさせてもらう。 
いつか、赤ワインのジェラートを食べてみたいな… 

 














アンティーカ マチェレリア ファロルニ 

Piazza Giacomo Matteotti, 71 
50022 Greve in Chianti 
電話(+39) 055 853029 
メール:info@falorni.it