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Vestri カカオの豆の栽培から、完成された魅惑のチョコレート、そしてジェラート作りまで手がける人気のチョコレートショップ、ヴェストリ。

アイスクリームレビューの掲載記事より抜粋しています。


どのジェラテリアでも置かなければならない味といえば、
皆さんおわかりですね。そう、老若男女から常に支持を
集めているチョコレート!

 
フィレンツェにはチョコレートには熱い情熱を注ぐ
チョコレート専門店がいくつかあるが、
今回紹介するのは、
他社から仕入れすることに満足することができず、
チョコレートの原料となるカカオの豆の栽培から
完成された魅惑の黒い塊になるまで、
整備貫徹された生産課程を絶え間なく監視する
チョコレート屋さん、ヴェストリである。
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フィレンツェ人気のチョコレートショップヴェストリの外観
日本でも人気を博したロベルト・ベニーニの名画
『ライフ・イズ・ビューティフル』の舞台となった
トスカーナの南部にあるアレッツォという街で、
30年以上前にDaniele Vestri(ダニエロ・ヴェストリ)さんが、
奥さんと一緒にチョコレート工房を創立した。
間もなく工房は名高いチョコレート屋さんとして
イタリア全国で評判が高まった。

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店頭に並ぶカラフルなパッケージのチョコレート
そのうち、娘のベネデッタと
息子のレオナルドも経営、製造に参加。
普通のチョコレートを卓越する製品の生産に家族で努めて来た。
いかにもイタリアらしい小規模会社の物語である。
そして2005年、自分の味をさらに洗練させるため、
ついにドミニカ共和国で自社のカカオ農園を購入。
定期的にダニエロさんは大西洋を渡り
栽培プロセスを監視できるようになった。

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店内はたくさんのチョコレートが。

ここまでは高級チョコレート店のサクセスストーリーだが、
ここからがお待ちかねのジェラートストーリーだ。
2002年、ヴェストリはチョコレートだけに飽き足らず、
自分たちのチョコレートを使ったジェラート販売に
挑んだのである。アレッツォ本店に続き、
トスカーナ州の首都フィレンツェに新しい店をオープンした際に
店長を担当することになったダニエロの息子レオナルドは
「ただヴェストリのチョコレートを売るだけではつまらない、
俺はジェラートを作りたい!」と、店の裏にある工房で
「俺のジェラート」を一人で作り、販売を始めたのだ。

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店長のレオナルド君

お父さんがサントドミンゴで愛を込めて育てている宝物を
使って作られたチョコレート、それを贅沢に使用した
チョコレートのジェラートはたちまち人気になり、
現在もチョコレート販売をしながら、
こだわりのジェラートを販売している。
 

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ピスタチオ、ヨーグルト、チョコレートを味見させてもらった。
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外気に触れないようしっかり管理されている。
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オリーブオイルをたっぷりジェラートにかける。
取材に伺った時はジェラートシーズンが始まっていないと
いうこともあって、置かれているフレーバーは8種類のみであったが、
4月には16種まで増やすという。そのなかの人気のフレーバーは
もちろん、チョコレートベースのバリエーション。
シチリア産オレンジフレーバーのチョコ、
ミントフレーバーのチョコやジンジャーフレーバーのチョコ、
またはラムの入ったチョコなど、チョコマニアにはたまらない。
またチョコレートだけではなく、野いちごとホワイトチョコレートの
ミックスクリームなど、フルーツやヨーグルトなどの
フレーバーも工夫してアレンジされている。
「添加物を一切使っていないから、他の店のジェラートよりは
ちょっと冷たいけれど、食べた後は口がさっぱりしていて美味しいんだ」
と、レオナルド君が自慢する。グルテンアレルギーの人も

安心して食べられるそうだ。
ヘルシーで伝統的な作り方をどこで学んだのかと
レオナルド君に訪ねてみると、
これまた不思議な物語を教えてくれた。
「ある日店の前に変な酔っぱらいのおっさんがいて、
なんとなく話しかけたら俺と同じアレッツォ出身だった。
そしてびっくりしたのは、そのおっさんはフリッリFrilliという
フィレンツェで最古のジェラテリアで働いていた人だったんだ。
フリッリはもうとっくにつぶれたけど、そのおっさんは
そこで学んだジェラートのレシピを受け継いでいたんだ。
そして、ちょっとずつ仲良くなった俺に、なんの下心もなく、
タダでレシピを教えてくれた。当時のジェラートはミルク、
砂糖、卵しか使わなかった。最高においしいけれど、
やっぱり保存性や衛生面で考えると今日はなかなか店で
出せないものだったんだ。でも俺はその伝統的な味と
最新技術を融合しユニークなバランスを出そうとしている。
ほら、おいしいだろ?」レオナルド君から差し出された
ジェラートカップには、オレンジフレーバーの
ダークチョコにピスタチオ、ヘーゼルナッツとクリーム、
といったコッテリ濃厚なイメージの味ばかりだったのに、
食べてみるとなるほど、後味が驚くほどさっぱりしている。
「しばらくしたら、現れた時と同様、そのおっさんは

どこかに消えてしまったんだよ。」とレオナルド君が笑った。
僕がその物語のキャラクターを想像していると、
若いカップルが店に入ってきた。彼は
北イタリアっぽいなまりで変わった注文する。
「昨日、テイスト(フィレンツェで行われるフードフェア)
で食べたオリーブオイルのやつ、また食べたいんですけど…」
「あー、ありますよ」と、レオナルド君が答えながら
オリーブオイルの瓶を取り出した。オリーブオイル?
とびっくりする僕の前で、カップに入れたヨーグルト味の

ジェラートの上に、たっぷりとオリーブオイルをかけたのだ。
カップを受け取った若者がジェラートを口にして、
彼女に嬉しそうに言った。「これは最高だぜ、
ほんと!わざわざフェアで店の住所聞いてここにたどり着いたよ!」
まさか、アイスにオリーブオイル!

イタリア人は何にでもオリーブオイルをかけるんでしょ

と日本人の友達から冗談交じりに言われたことがあったけど、
これを見たらさすがの僕もびっくりだ。
オリーブオイルをジェラートにかけるなんて斬新すぎる!
味見をさせてもらった。…まさか…旨い。
「これは去年のテイスト・フェアで知り合った
オリーブオイル会社の社長のアイディアだったんだ。
いろんなジェラートと合わせてみたけど、
やっぱりヨーグルトが一番オリーブの味とバランスが
とれて共鳴するね」

そのまま食べても美味しいオリーブオイル

残念ながらこのメニューは限られた
時期にしか出さないそうだが、もし、立ち寄ってみた際には
「ジェラート・コン・オリオ・デ・オリーバ」
と注文してみよう。ラッキーだったら出てくるかもしれない。

レオナルド君、日本人のお客さんにだいぶ
慣れているようなのでご安心を。


グルメ大国日本には、ヴェストリが大事な目を置いている。


他の国では支社を開いていないが、日本では最近
Vestri Japanができて、今年のバレンタインで
バカ売れしたらしい。

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可愛らしい容器も日本人には人気
「父は日本が気に入ってるみたいなんだ。
でも、ヴェストリのジェラートは今の所ここ、
フィレンツェの店舗でしか食べられない。
いつか俺のジェラートも日本に出してみたいなぁ」


そうそう、ここヴェストリでは春となると、
グラニータ(かき氷)、他にもラムやジャンドゥヤの
アフォガート、冬にはホットチョコレートも提供している。

ピスタチオのジェラートにホットチョコレートのアッフォガート!

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ほおづきをチョコレートでコーティング。驚きの美味しさ。
もちろん、ヴェストリ本店はチョコレートのほかに
レオナルドのオリジナルチョコレート、例えば、

トロピカルフルーツのほうずきが入っているプラリネもおすすめだ。

確かに、店から出てボルゴ・アルビツィという道を歩くと、
次々とジェラート屋さんが並んでいる。フィレンツェの
ドゥオーモに近い旧市街のメインストリートにしては
観光客の割合が少なく、どちらかというとフィレンツェ人が
フラッと遊びにくるエリアだ。小洒落たオーガニックレストラン、
香水やキャンドルなどを売っている工房、
かわいい雑貨屋さんなどなど、
ドゥオーモやヴェッキオ橋周辺にあるザ・観光地の店とは
一線異なる。ただ、歴史マニアである僕には、店の商品よりも
この店々を収納している建物や、その道の名前の由来などに
興味を引かれる。


少しマニアックな話にお付き合い頂きたい。

例えばこのボルゴ・アルビツィという道。
イタリア語では通りとは普段ヴィア(via)、
もしくはストラーダ(strada)と呼ぶ。まず、
通りをボルゴと呼ぶことはおかしいのだ。
ボルゴ(borgo)とは「村」か「街」、という意味である。
(ドイツのハンブルグの「ブルグ」も同じ語源から来る)
なぜこのような名前をつけたのか。実はこの道は昔、
フィレンツェの街の部分ではなく、町の最古の城壁の
すぐ外にあったのだ。盛えたフィレンツェに外から
引っ越してきた人々は、城壁の中で住む場所が
なかなか見つからず、街の城壁の外に自分の家を建てた。
そしてそれは、ちょうど村のように城壁内の
フィレンツェから隔てられていたことから、
ボルゴと呼ばれるようになった。

後に、新しい城壁の輪がだんだん追加され、
この「村」も新しい城壁に囲まれ、
フィレンツェの町の中に吸い込まれた。
かつて昔は上野や渋谷は江戸の一部ではなかったのに、
今日は胸を張って「東京!」と言えるようになった、
と考えてもらえればわかりやすい…かも。

そしてもう一つ、ボルゴ・アルビツィの「アルビツィ」は、
この道に数多く建物を持っていたアルビツィ家という
貴族から名前を取ったそうだ。アルビツィ家の
最後の末裔は19世紀まで生きていたそうだが、
家族の歴史はなんと、13世紀まで遡る。
そしてここには僕も結構びっくりした発見があるんだ。
アルビツィ家の始祖は12世紀末にドイツからイタリアに
来たらしいのだけど、彼が最初に住み込んだ町は
フィレンツェではなく…アレッツォだった!
そう、そのヴェストリのレオナルド君と同じだ。
確かに、トスカーナの地図をみると、まずフィレンツェの
最古の旧市街から東に行くとボルゴ・アルビツィに出るが、
そのまままっすぐ1キロぐらい続くと、アレティーナ通り
(アレッツォに辿る道という意味)になる。
そしてそれはもちろん、アレッツォまで続く。

大昔、アルビツィさん達はアレッツォから
フィレンツェに移り住んだ時、まず住みだした場所は
東側の門の辺り、地元のアレッツォへ続く道沿いだった。
そして、800年後、またアレッツォからやってきた
ヴェストリは、この道に店を開き、この道で
アレッツォ人の酔っ払いと出会い、ジェラートの技を学んだ。

あまりの偶然に感動しませんか?

アルビツィ家の歴史は、メディチ家などの
他のフィレンツェの貴族との激しい争いに左右されたが、
フィレンツェに移り住むまで日本人を見たことも
なかったレオナルド君もフィレンツェという
ジェラートの戦場にやってきて、
他のジェラート屋さんと戦ってゆく。

今も昔も、アレッツォ人にとってフィレンツェは辛い戦場なんだ。

今回はちょっと叙事詩的にジェラートレビューの幕を閉じよう。



アリベデルチ!


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ジンジャーのダークチョコ
Vestri ヴェストリ

Borgo degli Albizi, 11, Firenze

電話 055 234 0374